【レポート】生活者データから見えた。スマホECのブレイクスルーは「Vコマース」。


 

スマートフォンECラボのグループサイト「裏づけくんアカデミック」に掲載された、記事を転載してご紹介します。

著名マーケッターの家弓正彦氏が、日本写真印刷が構築した生活者心理データベース「裏づけくん」を活用して、スマートフォンECの未来を考察した貴重なレポートです!

 

■携帯電話の普及とライフスタイルの変化

携帯電話が普及して現代人の生活のなかに溶け込んで久しい。「裏づけくん」のデータによると、全体の60%が「携帯電話は私生活の必需品である」と回答している。

 

図表1 Q:メールや携帯電話(スマートフォン)は私生活の必需品であると感じるか

メールや携帯電話(スマートフォン)は私生活の必需品であると感じるか

確かに携帯電話は生活者のライフスタイルを大きく変えた。さらにスマートフォンが浸透し、タブレット端末が登場すると生活者の消費行動はどのように変化し、企業はどのような対応を迫られるのであろうか?ここでは大胆に仮説を交えて洞察してみたい。

 

 

■イノベーター理論とは

その前にロジャースの「イノベーター理論」を紹介しておこう。ロジャースは顧客が新製品を購入する態度を下記の5つに分類した。

 

(1) イノベーター(2.5%)

新商品が出ると真っ先に飛びつくタイプ。商品の目新しさや革新性に魅力を感じるいわゆる新し物好き。

(2) アーリーアダプター(13.5%)

流行に敏感でイノベーターに次いで新商品を購入する。この層が支持することで普及が加速することが多い。

(3) アーリーマジョリティ(34.0%)

新商品の購入には比較的慎重だが、流行には乗り遅れまいとする気持ちが働く。初期導入者からの影響を強く受けやすい。

(4) レイトマジョリティ(34.0%)

新商品購入に懐疑的な顧客層。普及が過半を超え、周囲の大多数が採用していることを確認してから購入をする。

(5) ラガード(16.0%)

最も保守的で、流行には関心がない。最も新商品の購入は遅く、なかには最後まで未購入を貫く人もいる。

 

図表2 イノベータ―理論

イノベーター理論のユーザー区分け

出典:(公財)日本マーケティング協会:マーケティングWiki ~マーケティング用語集~

 

一般に新製品はイノベーターの購入から普及が始まる。その後、アーリーマジョリティに浸透し、普及率が約16%を超えると臨界点を超えたこととなり、一気に市場は成長期に入ると予想されている。実際に携帯電話の普及率の推移をみると、やはり16%を超えた1996年から急速に普及が加速していることがよくわかる。

 

図表3 携帯電話世帯普及率

携帯電話世帯普及率

出典:社会実情データ図録

あわせてスマホに目を向けてみよう。インプレスR&Dの「スマートフォン/ケータイ利用動向調査2013」によると、スマホの普及率は約40%に上ったようだ。これをイノベーター理論に照らして考えれば、スマホはすでにアーリーマジョリティの大半に浸透していることとなり、ちょうど携帯電話における1997年の状況に相当していると言えよう。さらに、同調査では「非利用者のうち65.5%が利用を検討している」との回答を得ていることを勘案すると、今年は普及率60%に迫り、レイトマジョリティへの浸透が見込まれる。

 

図表4 スマートフォン利用率の推移

スマートフォン利用率の推移

出典: ㈱インプレスR&D:『スマートフォン/ケータイ利用動向調査2013』

■買い物行動はどう変化しているか?

国内ネット通販市場は、野村総研調べによると前年度比15.9%成長の10兆2千億円と好調だが、モバイルコマース(携帯電話やスマホによる購入)はどのように推移しているのだろうか?

まず、米国での状況を確認してみよう。E-Marketer社の調査によるとモバイルコマースは116億ドル(2012年)と前年比73.1%の増加を示している。同社によるとモバイルコマース利用者の9割以上がスマホユーザーであるとしている。やはりスマホの普及はモバイルコマースの浸透に大きな影響を与えていると言えそうだ。

 

図表5 米国におけるMコマース市場の成長予測

米国におけるMコマース市場の成長予測

出典:eMarketer 社

 

日本では、2010年にモバイルコマース市場は1兆円を超えている。その大半はトランザクション系、サービス系だったが、2011年には物販系が33%の成長を遂げている。まさにスマホの普及率16%を超えたタイミングで買い物行動に変化が起こったようである。

 

図表6 モバイルコマース市場の内訳モバイルコマース市場の内訳

 

トランザクション系:証券取引手数料、オークション手数料など
サービス系:旅行チケット、興業チケットなど
総務省の委託を受けてモバイル・コンテンツ・フォーラムが調査

出典:スタイル㈱:WirelessWire News

 

「裏づけくん」によると、モバイルコマースの経験者は全体平均で31%、内訳としてはやはりイノベーターが経験度55%と突出しており、現時点ではまだイノベーターがモバイルコマースをけん引していると言えそうだ。そのうち約半分をトランザクション系、サービス系と仮定すると、物販系モバイルコマースはちょうど臨界点となっている16%に差し掛かろうとしているのかもしれない。

 

図表7 Q:携帯電話・スマートフォンから商品を購入したことがあるか

携帯電話・スマートフォンから商品を購入したことがあるか

 

■モバイルコマースのブレイクのカギは?

そもそもモバイルコマースを活用するドライバー(動機づけ要因)は何だろうか?もちろん「手軽に、いつでも、どこでも」購入できることに他ならない。しかし、同時に活用を阻害するバリアが存在する。最も大きなバリアは画面の大きさによる情報量の制約にあったと思われる。しかし、その環境は大きく変化を遂げようとしている。

その一つ目はタブレット端末の普及だ。各社から様々な新製品が投入され、小型軽量化、機能性、使い勝手などが向上している。現時点では、「裏づけくん」によればタブレット端末の普及は3.8%。イノベーターに限ってもまだ10.8%と、まだまだ普及期に入ったとは言い難い。しかし、今後の購入意向を見ると、全体で8.9%、やはりイノベーター13.8%が引き上げているものの、ラガードでも7.6%が購入意向を持っている点は注目に値する。昨今1万円を切る端末も発売されており、低価格化が進めばこの流れは加速し、年内に一気に市場が拡大する可能性が高い。2013年はいよいよ本格的タブレット元年となるかもしれない。

 

図表8 タブレットPCの利用について

調査データ タブレットPCの利用について

 

■リッチコンテンツの時代

同時に、リッチコンテンツ(動画など)の浸透によって、買い物行動は変化する可能性がある。携帯キャリアはLTE(高速データ通信規格)サービスの提供を開始し、携帯端末の利用環境はますます快適になりつつある。これにより携帯端末におけるリッチコンテンツの本格活用の時代が到来するかもしれない。やはり人々は動画の情報力には魅力を感じているようだ。

「裏づけくん」を見ると面白い数字がある。

 

図表9 商品・サービスの参考とする情報源

商品・サービスの参考とする情報源

最近注目されているソーシャルメディアのなかでもYoutubeの支持が強いことがわかる。

しかし、さらにイノベーター理論の5セグメントをみると興味深い特徴が見えてくる。テキスト情報、画像情報を中心とするFacebook、Twitter、mixiはやはりイノベーター層の活用が際立っているのに対し、動画コンテンツを扱っているYoutube、ニコニコ動画は、イノベーターからラガードまでほぼまんべんなく浸透していることがわかる。やはり幅広い顧客層に動画コンテンツの表現力、わかりやすさが支持されていることの証ではなかろうか。

 

 

■企業の動画活用事例「Vコマース」

本来、買い物行動には購入を確信するための動機づけ情報が必要となる。特に衣料品などはその着こなし感、質感や印象、サイズなどテキストでは表しきれない情報が顧客にとって重要となる。そんな課題を解決するためにこれまでECショップは様々な工夫を凝らしてきた。

近年急成長を遂げてきた「ZOZOTOWN」を一例に挙げると、メーカーごとに異なっていたサイズ表示をZOZO独自の共通サイズで示し、さらに着用しているモデルの体型サイズを明示している。こういった工夫で安心してサイズ選びができるようになった。さらに消費者にとって最も重要なのは様々なカットの画像を数多く載せることによってその商品イメージを伝えることだと思う。その点、ZOZOは画像が多い。カラーバリエーションや角度も変えて画像を徹底活用している。しかし、それを超えるリッチな情報が「動画」に他ならない。

モデルが着用した動画は、着用イメージ、着こなし感、その動きから感じられる素材感など、顧客にとって魅力的な訴求ポイントを余すところなく表現できるはずである。さらに動画は音声情報と合わせることでさらに表現力が豊かになる。これからZOZOが強化するとしたら、動画掲載だと思う。

 

動画を活用したコマースは「V(Video)コマース」とも呼ばれている。その成功事例としては米国のネット通販企業Zappos社が有名だ。同社は5万本もの商品動画を掲載することによって、サイト滞在時間は3倍に、コンバージョン率に至っては最大30%も向上したと言われている。

2~3年前からZapposは注目されはじめたが、まさにスマホやタブレット端末の普及、通信の高速化といった背景を受けて、ネットコマース業界ではさらに動画活用の流れは進んでいくに違いない。こういったリッチコンテンツの活用は、購入促進だけでなく、認知や関心喚起、顧客サポートなど様々な企業のマーケティング政策に大きなインパクトを与える可能性を秘めている。

 

【執筆者のご紹介】

家弓 正彦(かゆみ・まさひこ)

(株)シナプス 代表取締役

松下電器産業でFA関連機器のマーケティングを担当。その後、三和総合研究所を経て、株式会社シナプスを設立。

 


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