■ショールーミングがリアル店舗を滅ぼす?!
「ショールーミング」という言葉をご存知だろうか。これはECで買い物をする顧客が、実物を店舗で確認後に同じものをアマゾンや楽天から購入する行為である。
NRIの「生活者1万人アンケート調査2012」によると、インターネットで商品を購入する顧客でも7割近くは実物を店舗で確認してから買っている。
「ショールーミング」は以前から言われていた現象だが、昨年の中間決算で家電量販最大手のヤマダ電機が営業赤字に転落したことが記憶に新しい。 経営幹部のコメントを読むと「ショールーミングに対抗するには価格で勝負するしか無い」という状況のようだ。
年間売上げ2兆円と圧倒的なバイイングパワーをもつヤマダ電機でこの状況と考えると成長を続けるECに価格で対抗するのは、長期的には難しいという事が言えるだろう。
出典: NRI生活者1万人アンケート調査2012
■店舗での買い物はオワコンか?
実際にECの市場規模は年々増えており、2013年では市場規模は約9兆円となっている。 しかし、実際の消費に占める割合は約3%と先行する米国の6%と比べると半分程度にすぎない。 その点からセキュリティなどの環境を改善していけば、現在の倍程度の成長は期待できると考えている関係者が多いようだ。
「生活者心理データベース・裏づけくん2013年度版」の中に興味深いデータがある。生活者が“現在、あなたが時間やお金を使っているものをすべてお知らせください。”という項目を比較してみた。 買い物に関する項目を比較すると“店舗でのショッピング(23.5%)”と“ネットショッピング(38.2%)”となっており、実際の金額と乖離はあるもののネットショッピングへの関心が高いことが分かる。
一般的な顧客はリアル店舗での買い物に楽しみを見いだせなくなっているというのが実情ではないだろうか。
■各社が取り組むO2O施策の課題はiPhone
先のヤマダ電機に見られるように各社この状況には危機感を持っており、WEBで集客した顧客をリアル店舗に誘導するO2O施策(オンラインtoオフライン)に力を入れている。
いくつかを事例で紹介すると
東急グループ:渋谷でポスター連動型ECショップ「スマートバーチャルショップ」
2013年10月7日から行われていた、東急グループやVASILYなどの5社による共同実験。
バーチャルショップを使ったO2Oサービスで、仕組みとしては、東急渋谷駅の地下4階に専用のポスターを設置。 ポスターに貼られたNFCやQRコードを読み取りECサイトに遷移して商品を購入することができる。
マルイ:秋のバーゲンでユーザーの行動データを取得するO2O実験
マルイが2013年9月26日から開催する「秋のマルイ ビックバザール」において、リクルートのアプリ「ショップリエ」とO2Oソリューション「Profile Passport」を連携させユーザーの行動データを取得する。 仕組みとしては、「ショップリエ」をインストールしたスマートフォンに対して、Bluetoothと音波発信器を使ってジオフェンシングで行動データを取得するもよう。 ユーザー側は、マルイの中で所定の店舗に近づくとアプリを開かなくてもクーポンがプッシュで送られてくるメリットがある。
このように店舗での体験を向上させる取り組みが実験レベルで始まっている。
しかし、技術的な課題もありデファクトと言えるようなものは無い。
それは音波やNFCなどのスマートフォンと通信する技術がデバイスやOSに依存しているためである。
音波はアプリを立ち上げていないと使えず、AppleのiPhoneでNFCが使えないことが主要な要因だと思われる。 そして、その問題を解消すると期待されているのがiBeaconというAppleの新技術だ。
■iBeaconがデイバイスの垣根を超えるか
「iBeacon」とは昨年9月にiPhoneのiOS7に採用されたことで注目を集めているBluetooth Low Energy(BLE)を使った技術。 iPhoneが標準対応しBLEという汎用技術を使ってるところに特徴がある。
そして、iBeaconはApple社の商標だがAndroid端末にも同様の技術を適用することが可能であり、スマートフォン全体で使う事ができると期待されている。
このような経緯からiBeaconsは、O2Oの切り札として注目を集めている。 例えば店舗などに置かれたBLEの端末は、アプリの入っているスマートフォンと通信をする、そしてスマートフォンはサーバーまで情報を取りに行く。ビーコンごとに割り当てられたIDを発信できるので、ビーコンごとにアプリ側の対応を変えることも可能となる。
■すでに始まっているiBeaconのマーケティング活用
最後に海外で始まっているiBaceonを使ったO2Oの事例をご紹介。
大リーグでiBeaconが採用 MLBは2014年1月よりiBeaconを実稼働させた。
20個のスタジムアに平均で100個のビーコンを設置。 iBeaconsの機能を搭載した新しいMLBのアプリでは次のようなことができるもようだ。
- スタジアムに近づくと、スタジアムでの今日の対戦などの情報をポップアップで教えてくれる。
- スタジアムのゲートに来ると、入場用のバーコードをディスプレイに表示してくれて、さらに座席の場所まで教えてくれる。
- パスブックと連動しているので、パスブックでチケットを購入していた場合は、そのチケットをディスプレイに表示してくれる。 アプリはポイントカードにもなっており、その場所に行くだけで自動的にポイントが溜まっていく。
- スタジアム内のお店のそばに来たら、クーポンがプッシュ送信される。
- このように、「スタジアムに近づく」「スタジアムのゲートを通る」「お店の側に行く」など、位置情報をトリガーとして、情報がプッシュ送信されます。
大リーグ関係者のコメントを紹介すると NFCなどでは端末にタッチする必要があったし、ARや音声系のO2Oアプリではアプリを起動しなければならなかったわけですが、iBeaconsでは何かに触れる必要もないし、アプリを起動していなくても、近くにくれば自動で受信をしてくれます。GPSの弱点である室内などでも問題ありません。
スマートフォンECラボより引用
アメリカの百貨店メイシーズが採用したShopBeacon。
米国の大手百貨店メイシーズがiBeaconを使ったO2O施策を行うことを発表した。 ShopKickが提供するiBeaconの端末「ShopBeacon」を採用。 サービスの内容としては、メイシーズの入り口や商品に近づいたりすると、プッシュで商品情報やクーポンが送られてくる。
アントワープの美術館でiBeaconが活用される
実装を行ったのはベルギーの企業Prophets。ビーコンはEstimoteのものを使っています。CEマーキングがとれているのか心配になりますね。 こちらの美術館のアプリケーションは作りが非常に綺麗で、iBeaconの施策としてとても参考になります
美術館 iBeaconsA) 16世紀に描かれた絵画と、19世紀に取られた写真で、現在立っている中庭を比較できます。
Apple iBeacon technology applied to classical art in Antwerp Museum from ProphetsAgency on Vimeo.
- ビーコンを使ったスタンプラリー的なノリでルーベンスの家系図を埋めていきます。
- ビーコンを使って「この作品はどこに展示してある?」ゲームができます。
- ビーコンを使った「室内GPS機能」により、自分が館内のどの地点にいるのかがわかります。
- X線による内部の画像や、絵画の拡大などができます。
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